50音ボードで伝えたかった、たった6文字の真実とは?
前回の続き
ganbattegannbaranai.hatenablog.com
その方は、CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)経鼻的持続陽圧呼吸療法というものを装着されており、声はあまり出せなかった。
けれどもイエス、ノーはできる方で、頭ははっきりしていた。
私はそのころ神経難病病棟に配属されてから、
前述したブログのようにやさぐれていたため、
恥ずかしながら日々をただルーティンに終わらせていただけのセラピストであった。
そんなある日、彼女は何かを私に伝えようとしていた。
私は何かを伝えたいのかなというのは理解していたものの、
それを理解しようとはせず、そのままその日のリハビリを終わらせてしまった。
次の日も彼女は何かを伝えようと必死だった。
来る日も来る日も彼女は私に何かを訴え続けた。
ある日、同じようにずっと彼女は訴え続けるため
ふとした思い付きから、私はSTから50音ボードを借りて
彼女が何を訴えたいのかを確認することにした。
(これが50音ボード)
その時はとてもしぶしぶといったような感じでやっていたと思う。
療養病棟に配属され、回復見込みがなかなかない人への
リハビリというものに異議を見いだせずにいた自分がおり
正直モチベーションが上がらなかったからだ。
そんなときの自分の顔はどんな顔をしていたのだろう。
たぶん相当はたから見たら、やる気がなさそうな顔をしていたに違いない。
それでも彼女は私が来ることをとても楽しみにしてくださっていた。
顔を見るたび笑顔でほほえみかけてくれていた。
その日、彼女は時間いっぱい使いながら、たった6文字を指さした。
なかなか動かない右手で、上肢をセッティングすることで
一生懸命指さした。
それは「そらがみたい」だった。
続く。